超王道ストーリーかつ私の大好物ジャンルなのに、全く刺さらなかった。
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- ストーリー
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- エセ家族愛
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- 映像
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- 演技
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- テンポ
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評価:
「サマーウォーズ」の概要
あらすじ
人々は、ショッピングからゲーム、各種のコミュニケーション、そして行政手続きに至るまで、生活の多くをインターネット上の仮想世界“OZ(オズ)”で行うようになっていた。ある夏の日、友人の佐久間とともにOZの保守のアルバイトをしていた高校生・健二(けんじ)は、あこがれの先輩・夏希(なつき)から、一緒に彼女の田舎まで旅行をするという「バイト」に誘われる。長野の夏希の実家・陣内家(じんのうちけ)は、戦国時代から続く名家で、曾祖母の栄(さかえ)ばあちゃんを筆頭に個性豊かな面々がそろったエネルギッシュな大家族。バイトの内容は、この家族たちの前で夏希のフィアンセ役を演じるというものだった。
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出演・監督・ジャンル等
- 出 演 :神木隆之介, 桜庭ななみ, 富司純子
- 監 督 :細田守
- ジャンル:SF, コメディ, アニメ, ドラマ, アニメ, ロマンス, アクション
- 上映時間:114分
- 国 :日本
- 制作年 :2010年
以下「サマーウォーズ」のネタバレあり。
「サマーウォーズ」感想①超王道ストーリーだが後一歩足りない
サマーウォーズのストーリを一言で言うと「様々な立場の人が一致団結し、世界の危機を救う」というもの。
AI「ラブマシーン」が電脳世界「OZ」をハッキングしたことが原因で世界中で混乱が発生している中、そのハッキングが遠因で陣内家の要であるおばあちゃん「さかえ」が死んだことを契機に、AI「ラブマシーン」を倒すため陣内家が一致団結する。
「ラブマシーン」はゲーム好きであり、OZ内のゲームで勝負を仕掛け他プレイヤーのアカウントを奪う特性があるため、OZの格闘ゲームでトッププレーヤーである「かずま」が「ラブマシーン」に格闘ゲームの勝負を仕掛ける。
他の陣内家の人々はゲーム内で協力する他、「かずま」が最高のパフォーマンスを発揮できるようハード面でのサポートをする。例えば、漁師は電力として自分の船を持ち込み、自衛隊員は部隊から軍用の通信車を、電気屋は大学に納品する予定のスーパーコンピューターを提供する。こういった様々な職業の人々が力を合わせる所は見ていて気持ちがいいし、とてもワクワクするシーンだ。
しかしそういった王道ストーリー展開に水を差す場面があるのが残念なところ。例えば警官である「しょうた」は、悪気はないにしろ、スーパーコンピューターを冷やしていた氷を勝手に移動させ、その結果コンピューターが冷却できず「ラブマシーン」に敗北する。その後、特に「しょうた」が挽回するところはなく、足を引っ張るだけの存在として描かれていたのは残念だ。
また、甲子園投手の「りょうへい」は「ラブマシーン」との対決に一切関わらない。その親である「ゆみ」も陣内家が大変な時に息子をTVで応援しているシーンが度々挟まれ、一致団結感が薄まっていた。
彼らにも何かしらの活躍の場があれば、物語に没入できたのだが残念である。
「サマーウォーズ」感想②薄っぺらい「家族愛」に違和感

サマーウォーズの主要テーマと言っていい「家族愛」だが、これが微妙にズレていて腑に落ちない。一言でいうと「AIが想像で描いた家族愛」のような薄気味悪い感じがある。
例えば、「さかえ」の遺書を読み上げる場面において、妾の子である「わびすけ」を「私の子にすることができて嬉しい」と愛情一色で受け入れているシーンは気色が悪い。
一緒に生活していく上で血縁関係以上の親子関係ができたのならわかるが、初対面で不倫相手の子どもを素直に受け入れられるだろうか。ましてや「わびすけ」は全く陣内家と血縁関係がないのだから(侘助の父「徳衛」は婿養子)、陣内家当主としては複雑な心境があって然りだが、その辺りはバッサリと切り捨てられており、薄っぺらさを感じてしまう。例えば「わびすけ」を受け入れるのに複雑な心中だが、「わびすけ」の手を握ったときに、「こんな小さな手の子が、こんなに年が離れた私に頼らざるを得ないんだ。本当の子どもと思って迎えよう」というちょっとした描写があればスムーズに受け入れられたのだが。
では、家族故の無条件の愛を描いたのかと言われるとそうでもない。「わびすけ」自身が作った「ラブマシーン」が原因で世界的混乱を生じさせたにも関わらず、悪びれない「わびすけ」を、「さかえ」は「死ね」と言って拒絶する。
身内だからこそ殺して責任を取らせるというのは一つの解決方法ではあるが、何故他人には言えた「あんたならできる」「騒動を止められるのはお前だけ」といった言葉をかけてやれなかったのか。何故「わびすけ」に行動による責任を取らせなかったのか。一族の皆から拒絶された彼の功績を認めたのは、TVのニュースキャスターだけとは何たる皮肉だろうか。
「さかえ」の行動理念に一貫性がなく、ツギハギのような家族の絆に感じてしまった。これにより「さかえ」や「わびすけ」が物語を進めるための舞台装置に成り下がってしまった。
「サマーウォーズ」感想③細かいマイナス要素が没入感を阻害する
物語に大きく影響する部分ではないのだが、作中の至る所で「ん?」となる場面があり、物語への没入感を阻害していた。
リアリティーのない物語展開

「けんじ」が「OZ」をハッキングした犯人として、TVニュースで顔写真が公開される。逮捕もされていない未成年の顔写真を、目線入りとはいえニュースで流すのは流石にあり得ない展開で、少し白けてしまった。
他にも令状なしに「けんじ」を逮捕をしたり、自衛隊員が部隊の軍用車を私的利用したり等、ご都合展開が多い。
リアル調に合っていない表現技法

絵柄・声優はリアル調だが、顔を赤らめたり、怒ったときに目が吊り上がり牙が生える等、表現はアニメチックで違和感があった。
また、コンピュータを搬入する際フォークリフトをドカドカ家にぶつけたり、「わびすけ」がボロボロのスポーツカーで陣内家に戻ってくるシーン等は、作品全体にあるリアル調の雰囲気から浮いてしまっていたように感じる。「そういう絵を見せたいだけでは?」と思ってしまい、白けてしまった。
細かいことだが、こういう違和感が様々なところにあって物語に集中できなくなってしまった。
最後に
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- ストーリー
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- エセ家族愛
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- 映像
- 4
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- 演技
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- テンポ
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評価:
決してつまらない映画ではないが、色々な阻害要素が散りばめられていて、物語に没入できなかった。「OZ」の世界観は今見ても古臭く感じさせないことから、恐らく当時はとても斬新に感じただろう。公開当時に見ていたら、最初の「OZ」のシーンでのめり込んで、細かい点を気にせず楽しめたのかもしれない。
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