極上の料理に蜂蜜をぶちまけるがごとき作品。それでも「食えなくもない」のは幸か不幸か。
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評価:
「残穢」の概要
あらすじ
観る者の常識を覆す、衝撃の結末。 小野不由美の傑作小説、待望の初映画化 あなたは、考えたことが、ありますか? 今、自分が住んでいる場所に、 過去どんな人が住み、 どんな事件があったかを・・・。 その「音」を聞くまでは、日常でした——— 小説家である「私」のもとに、女子大生の久保さんという読者から、1通の手紙が届く。 「今住んでいる部屋で、奇妙な“音”がするんです」 好奇心を抑えられず、調査を開始する「私」と久保さん。 すると、そのマンションの過去の住人たちが、引っ越し先で、自殺や心中、殺人など、数々の事件を引き起こしていた事実が浮かび上がる。 彼らは、なぜ、“音”のするその「部屋」ではなく、別々の「場所」で、不幸な末路をたどったのか。 「私」たちは、数十年の時を経た壮大なる戦慄の真相に辿り着き、 やがて、さらなる事件に巻き込まれていく——。
残穢 住んではいけない部屋 – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画
出演・監督・ジャンル等
- 出 演 :竹内結子, 橋本愛, 佐々木蔵之介, 坂口健太郎, 滝藤賢一, 成田凌
- 監 督 :中村義洋
- ジャンル:サスペンス, ホラー
- 上映時間:107分
- 国 :日本
- 公開年 :2016年
以下「残穢」のネタバレあり。
「残穢」感想①ミステリーとして稚拙なストーリー
「部屋から変な音がする」という、それだけでは取り立てて怖くない怪奇現象を調べていくにつれて、徐々に恐ろしい正体が明らかになっていくというミステリーホラーの王道ストーリーなのだが、その見せ方が稚拙に感じた。
本作における真相への行程は、淡々と芋づる式に、原因と思われる事象がぽこぽこと出てくるだけ。マンションに詳しい人に話を聞く→土地に詳しい人に話を聞く→昔住んでいた一族に詳しい話を聞く。それを繰り返す。
そこに「ひらめき」や「叙述トリック」のような意外性は無い。ミステリーの醍醐味は、今までに出揃った証拠を考察していくうちに、「もしかしてこれってこういう意味だったのでは?」と「新たな気づき」へと繋がる瞬間だが、この作品はひたすらに「新しい証拠が出ました!」を繰り返すだけだ。
怪奇現象の原因は着物姿の女幽霊、そしてその幽霊は炭鉱の死亡事故の呪いが遠因ですと言われても、そこにミステリーの醍醐味は無い。
「残穢」感想②TV番組よりもチープなホラー描写
クライマックスで怪異である炭鉱事故で死亡した幽霊が現れるのだが、それがチープで全く怖くない。怪異は生きている人間が化粧したかのような見た目で安っぽく、顔に煤を塗っただけのような見た目で本当に残念。襲われる男性編集者も全く恐怖心を煽らない叫び方で間抜けに感じた。
TV番組の心霊特集のほうがよっぽど怖い映像作品に仕上がっている。
名作「リング」と比較するとどうしてもショボさが目立つ
最後に幽霊が現れて、人を脅かすという演出は、和ホラーの金字塔「リング」のように、「じわじわとした恐怖演出から最後の最後だけ貞子(怪異)が現れる」という構成に倣った結果なのかもしれないが、本作では上手くいっていない。
「リング」では、貞子の登場で観客の恐怖がMAXになったが、この作品では怪異の見た目や演出がしょぼすぎて白けてしまう。恐らく、「大きな音を使わずに怖いホラー映画」を目指した結果だと思うが、その狙いと幽霊の登場が嚙み合っていないように思えた。
最終的な原因が普通の炭鉱事故で腑に落ちない
様々な怪奇現象の大元は、九州で起きた炭鉱事故によって死亡した炭鉱夫の呪いということが判明した。事故そのものは悲惨ではあるが、当時はそこそこの頻度で発生していたものであるし、作中の炭鉱事故は特別何か恐ろしい事故でもない。
正直「1つの一般的な炭鉱事故でこんな穢れが発生するなら、もっと悲惨な事故・事件ではどうなっちゃうの?」と思ってしまった。
真辺家にあったネチョネチョした床は何?
何なの?雑すぎる。
副題がクッソダサい
原作である小説のタイトルは「残穢」のみだが、この映画では「ー住んではいけない部屋ー」という副題がつけられている。この副題いる?本当にダサい。
「残穢」という言葉が持つ、「読み方分からないけどなんか怖そう」という読み手の恐怖心を煽る素晴らしいタイトルに、何故こんなクソダサ副題を付けてしまったのか。センスを疑う。
「残穢」感想③住職は何なの?
「お姫様の絵は戦災で燃えた」と嘘をついていた住職。映画のラストでは箱から絵を取り出して、少しにんまりとしながら眺める。お祓いをしているようには見えず、コレクターが鑑賞しているような様子に見えた。その後、絵の女性の表情が歪み、映画は終わる。
何故、住職は嘘をついたのか。何故最後に絵を取り出したのか。理由はよくわからない。
気になって調べたところ、坊主のラストシーンは映画オリジナルらしい。この時点で真面目に考察する気が失せた。副題といい余計なことしやがって。恐らく映画を見ている観客にも「穢れ」が感染したということを示しているのだろうが、そもそも本作を見た時点で「穢れ」が感染したことは表現できているわけで、全くの蛇足である。
観客にも「穢れ」が映ったことを意識させたいなら、普通のエンドロールを流しているところに、微かに嬰児の泣き声を入れるとか、帯が擦れる音が聞こえるとか、そういう没入感がある作りにしてほしい。
最後に
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評価:
原作小説は未読だが、素晴らしい素材を台無しにした映画なのではないだろうかと思わせる作品だった。原作では小説を読んでいる読者がまさに巻き込まれる演出が出来ていたのだろうが、映画では媒体が異なるため、いまいちパッとしない映画になってしまった。訳の分からないオリジナルシーンを入れるぐらいなら、「私」の職業を映画脚本家にして、視聴者に影響を与える改変をすべきだったのでは?と思う。
周辺住民の聞き込み時の赤ん坊が「わいて出る」発言や、生きている頃の高野トシヱの表情はちゃんと怖かったので、最後の妖怪大戦争のようなチャチな演出で台無しになっていたと思う。
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