ネタバレ感想「生きる LIVING」思ってたのと違ったなぁ

 黒澤版未視聴。もっと丁寧な描写が欲しかった。

  • ストーリー
    3
  • 思ってたんと違う
    4
  • 映像
    5
  • 演技
    5
  • テンポ
    4

評価:

目次

「生きる LIVING」の概要

<予告>『生きるLIVING』【3/31公開】 – YouTube

あらすじ

1953年。復興途上のロンドン。公務員のウィリアムズ(ビル・ナイ)は、いわゆる“お堅い”英国紳士だ。役所の市民課に勤める彼は、部下に煙たがられながら事務処理に追われる毎日。家では孤独を感じ、自分の人生を空虚で無意味なものだと感じていた。そんなある日、彼は医者から癌であることを宣告され、余命半年であることを知る— 彼は自分の人生を見つめ直し始め、充実した人生を手に入れようと新しい一歩を踏み出す。その一歩は、やがて無関心だったまわりの人々をも変えることになる—

生きる LIVING – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

出演・監督・ジャンル等

  • 出 演 :ビル・ナイ, エイミー・ルー・ウッド, トム・バーク, アレックス・シャープ, コリン・ブライス
  • 監 督 :オリバー・ハーマヌス
  • ジャンル:ドラマ
  • 上映時間:102分
  •    :イギリス
  • 公開年 :2022年(日本:2023年)

以下「生きる LIVING」のネタバレあり。

「生きる LIVING」感想①リアルな人生観と少しの救いが良い

 本作のストーリーを要約すると以下のような話になる。

 役所の公務員として働く主人公ウィリアムズは、情熱もなく淡々と仕事をこなすだけの毎日を過ごす。市民の意見をくみ取る市民課の課長でありながら、役所をたらい回しにあった市民の要望を「預かる」だけで、何も対処しない。部下からは距離を取られ、同居する息子夫婦ともうまくいっていない。

 そんな中、病により余命半年であることを知ったウィリアムズは、仕事を無断欠勤して、自殺用に睡眠薬を購入したり、酒を飲んだり、ストリップバーで遊んだりするが、気が晴れず。しばらくした後、仕事に復帰したウィリアムズは、市民からの要望であった街の公園の改修業務に乗り出し、ウィリアムズの精力的な活動により、公園が完成し、その後死亡する。

 情熱的に仕事をしたウィリアムズの姿に感銘を受けた部下たちは、「二度と市民からの要望を無下にしない」、「仕事をたらい回しにしない」等の誓いを立てるが、日々の業務に追われるうちにその時の情熱は冷め、かつてのウィリアムズのように仕事をたらい回しにするようになる。部署の新人ピーター・ウェイクリングは、そうした先輩職員に不満を持ちながらも、口に出すことはできない。ウィリアムズからピーター宛の手紙に「日々の業務に追われ、情熱を失いそうになったら公園に行きなさい」とあったので公園に行き、その場にいた警官とウィリアムズの話をして終わる。

 一人の男が死期を悟り、情熱を取り戻して偉業を達成する。そしてそれを見た周りの人々は感化され、良い方向に向かっていく―というのが映画や小説等のフィクションのセオリーだが、この映画では、それが「一時の感動」であることをリアルに描く

 一人の人間が出来ること、後世に影響を及ぼすことができることなんて殆どないよね、というリアルな視点が在りつつも、実際に出来上がった公園で喜ぶ子供たちや、新人ピーターがもしかしたら情熱をもち続けてくれるかもしれないというラストシーンで少しの救いがある。このような地に足の着いた救いはかなり好み。

「生きる LIVING」感想②もっと丁寧な描写が欲しかった

 ただ、主人公のウィリアムズの心の機微が読み取れなかった。正確に言えば、彼が「何故、死を目の前にして仕事に向き合ったのか」は作中で説明されるが、その説得力が感じられなかったという意味だ。

 彼の心変わりを描く場面は、以下の通り。

 死期を悟ったウィリアムズは、仕事をさぼって若い女性部下のマーガレット・ハリスと街で遊ぶ。
 
 ハリスは「(ウィリアムズに)下心はないのは分かっているけど、二人で夜遅くまで遊ぶには年齢差が…」と遠慮がちに言う。
 
 ウィリアムズは自身が余命僅かであること、ハリスの生き方(つまらない役所仕事でも面白くなるように工夫していること)の魅力に気づいたことを告白する。

 自身の死期を知らなかった頃のウィリアムズは、ハリスの生き方を見ても気にも留めなかったのだろう。自分の余命を知ってようやく、人生をどう生きるべきかを考え出したウィリアムズは、ハリスの生き方の魅力に遅まきながら気づいたということになる。

 しかし我々視聴者からしてみれば、ハリスの生き方はほとんど描写されていないため、よくわからない。新人のピーターにちょっと話しかけるシーンや職場の人たちに変なあだ名をつけていた程度の描写しかないのだ。そのため、ウィリアムズの「気づき」に説得力がなかったように感じてしまった。

 できれば、視聴者にもウィリアムズと同じ体験をさせてほしかった。102分という映画としても短めの尺では難しかったのだろうが、私がこの映画を見に行った目的は、「死期を悟った男の心の機微」だったので、その部分が弱く感じて、少しがっかりしてしまった。

最後に

  • ストーリー
    3
  • 思ってたんと違う
    4
  • 映像
    5
  • 演技
    5
  • テンポ
    4

評価:

 決して出来の悪い映画ではないが、期待した物とは違った。例えるなら、こってりな豚骨ラーメンを注文したら美味しい淡口の醤油ラーメンが出てきた感じ。

 この手のヒューマン映画を見たい!って思うときって「人生とは?」、「よく生きるとは?」みたいな哲学的な関心がある時だと思う。「どのような生き方をしたか」よりも「どうしてそのような生き方に至ったのか。心の変化のきっかけは?」といった部分に重きを置いている場合、この映画は物足りないだろう。原作の黒澤版を見たらまた違った評価になるかもしれないので、見たら追記しようと思う。

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