ネタバレ感想「シン・ウルトラマン」特撮好き以外には退屈でダサくしょうもない映画

 特撮やウルトラマンが好きな人以外は見なくていい映画です。

  • ストーリー
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  • 台詞回し
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  • 映像
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  • 演技
    3
  • テンポ
    2

評価:

目次

「シン・ウルトラマン」の概要

あらすじ

 次々と巨大不明生物【禍威獣(カイジュウ)】があらわれ、その存在が日常となった日本。通常兵器は全く役に立たず、限界を迎える日本政府は、禍威獣対策のスペシャリストを集結し、【禍威獣特設対策室専従班】通称【禍特対(カトクタイ)】を設立。班長・田村君男(西島秀俊)、作戦立案担当官・神永新二(斎藤工)、非粒子物理学者・滝明久(有岡大貴)、汎用生物学者・船縁由美(早見あかり)が選ばれ、任務に当たっていた。禍威獣の危機がせまる中、大気圏外から突如あらわれた銀色の巨人。禍特対には、巨人対策のために分析官・浅見弘子(長澤まさみ)が新たに配属され、神永とバディを組むことに。浅見による報告書に書かれていたのは…【ウルトラマン(仮称)、正体不明】。

イントロダクション・ストーリー|映画『シン・ウルトラマン』公式サイト (shin-ultraman.jp)

出演・監督・ジャンル等

  • 出 演 :斎藤 工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、西島秀俊
  • 監 督 :樋口真嗣
  • ジャンル:特撮,アクション
  • 上映時間:112分
  •    :日本
  • 公開年 :2022年

以下「シン・ウルトラマン」のネタバレあり。

「シン・ウルトラマン」感想①よくわからないテーマ

 特撮映画である「ゴジラ」を「シン・ゴジラ」である種のリアリティ映画にリブートした過去があっただけに、「シン・ウルトラマン」にも似たような期待をした人は多いのではないだろうか。「シン・ウルトラマン」は「シン・ゴジラ」とタイトルは似ているが、あくまで特撮映画であって、その期待は裏切られたと言っていいだろう。

詰め込みすぎて雑な展開

 本作はウルトラマンの誕生から死ぬまでを描いている。そのせいか詰め込みすぎな印象を受けた。丁寧に描かないといけない場面をすっ飛ばしたり、早口の説明口調で圧縮するせいで、作品の完成度は低い。その割に「この禍威獣(又は外星人)のシーンいる?」というのも登場するせいで、テンポは悪い。

 例えばザラブ星人だ。ザラブ星人は人型サイズの外星人で、人類と友好的に交渉すると見せかけて人類の滅亡を狙う、いわば搦め手系のユニークな外星人なのだが、ザラブ星人のすぐ後にメフィラス星人が登場する。問題なのはこのメフィラス星人も搦め手系なのだ。

 ザラブ星人もメフィラス星人も搦め手系で、こいつらが連続して出てきたせいで意外性がないし、短期間のうちに2回連続で外星人に騙される日本政府がめちゃくちゃ馬鹿っぽい。(意図して日本政府を間抜けに描いている節はある)
 原作ではザラブ星人はメフィラス星人の配下であるため、今作でもザラブ星人とメフィラス星人が裏でつながっている可能性は高いが、そのつながりを伝わるように描いていないため「また搦め手かよ、どっちが省けただろ」となったのは事実だ。

結局テーマは何だったのか

 この作品のテーマを私は読み取れなかった。作品の中に1本大きなテーマがあれば、多少詰め込みすぎていても楽しめたと思うが、そういったものを感じなかったので見ていて苦痛だった。特撮・ウルトラマンの小ネタを詰め込んだ映像作品というべきだろうか、中身がない。

「ウルトラマン」から結末を変えた意味はあったのか?

 散々「ウルトラマン」のオマージュ作品として描かれた本作であるが、結末は少し異なる。

旧ウルトラマンの結末とシン・ウルトラマンの結末の違い
人類は最後までウルトラマンの庇護の下

 TVシリーズの「ウルトラマン」の最終話では、ウルトラマンがゼットンに敗北するが、人類が開発した「ペンシル爆弾」によりゼットンを葬る。これにより、外星人による脅威から、ウルトラマンという外星人により人類を守るという構図から、人類は自らの手で人類を守るという構図に変わる。いわば人類の自立とウルトラマンとの別れを描いた場面ともいえるのだ。

 「シン・ウルトラマン」でもウルトラマンはゼットンに一度敗北するが、その後ウルトラマンから叡知を授かった人類はゼットンの倒し方を考案する。ここまでは同じストーリーなのだが、「シン・ウルトラマン」でのゼットンの倒し方は、「ウルトラマンがゼットンを殴った直後の僅かな時間にベータ・カプセルを起動(変身)することでゼットンとウルトラマンを別時空に飛ばす」というもの。

 つまり作戦の考案は人類だが、ウルトラマンの力が無ければ実行不可能な上、そのリスクはウルトラマン一人が背負う作戦なのだ。これでは最後の最後まで人類はウルトラマンの庇護の下にいるかのような印象を受ける。

 この作戦の立案前に「禍威獣の相手はウルトラマンに任せよう。人類はどうせ何もできないよ。」と人類の無力感に絶望し不貞腐れていた滝隊員がウルトラマンのメッセージで立ち直り、人類の叡知を結集するというシーンがあっただけに、結局ウルトラマン頼りというのは残念だった。

「シン・ウルトラマン」感想②幼稚でチープな禍特対。こいつらのせいで台無し

 とにかく禍特対が組織として機能しておらず、見ていてストレスだった。

 例えば、避難が遅れた子ども発見した禍特対の隊員(わずか4名しかいない)が「私助けに行きます!」と言い出し、それを聞いた班長も「行ってこい!」と送り出す。ちなみにその隊員の役職は「作戦立案担当官」。現場に行ってる場合ではない。現場にいる自衛隊と連携して自衛官に行かせるべきだ。しかも現場まで徒歩。車を使え。

 他にはウルトラマン故に単独行動を繰り返す神永隊員に対し、「あいつは単独行動が好きだからな~」と放任。組織として終わっている。

残りはたくさんあるため箇条書きにおいて紹介する。

  • 上司にタメ口。おちゃらけた言い方で緊張感を壊す。例:「透明の意味ないじゃん!」「虫嫌いだから行きたくない~」
  • 自衛隊から禍特対に指揮権が移行しても自衛官が変わらず指揮官席に座る。禍特対は幕僚席。
  • 政府を簡単に裏切る(葛藤なし)
  • 神永隊員の性格がウルトラマンと融合後変化したが言及無し。本当にお前ら仲間か?

 こうした非現実的な組織の在り方はあまりにもひどく、作品の完成度を低下させているだろう。

「シン・ウルトラマン」感想③全編通してダサい会話シーン

 台詞は全て早口で説明口調。会話として頭に入ってこない。もっと良い見せ方はいくらでもあるのに、ほとんど台詞で説明してしまう。全編通してひどいのだが、2つほど例を挙げておこう。

ゼットンが配置された直後の神永隊員(ウルトラマン)と政府の男とのやり取り

政府の男

ウルトラマンは国連の管理下に置く条約に批准した。従わなければ禍特対の隊員を殺す

神永隊員

恫喝するのは人間の悪いところだ。禍特対の隊員を殺したら人類を滅ぼす

政府の男

それは恫喝ではないのかね?わかった止めよう

 引き下がるんかい!

 本当にやり取りがダサい。防衛大臣やら禍特対の班長やらがロビー活動で国連をうまいこと抑えるなり、メフィラス星人との事件以降ウルトラマンと人類の間に信頼関係が生まれた結果ウルトラマンの管理は日本に任せることになったなり、見せ方はいくらでもあったのに。

浅見隊員がザラブ星人に捕らえられた神永隊員を助けるシーンでのやり取り

 ザラブ星人の暗躍により、神永隊員のウルトラマンに変身するシーンがWEB上に公開されていた。

浅見弘子

あなたのことが騒ぎになっているわ

神永隊員

そのようだな

バチーン!と浅見が神永をビンタ

浅見弘子

なんでウルトラマンってことを私たちに黙っていたの!?

神永隊員

あなたが私の立場なら言うか?

浅見弘子

・・・わかったわ

納得するな!ビンタする前に1秒ぐらい「私が彼の立場なら」って考えろ。「言うにきまってる!バディなんだから」と言い返すなり、ビンタせず「ベータカプセル」を渡すときに目で訴えるワンカットにするなり、いくらでもあるよ。

何故こんなチープなやり取りばかりなのか。

「シン・ウルトラマン」感想④メチャクチャな動きを特撮的演出として受け入れられるか

 ウルトラマンと禍威獣とのバトルシーンは何とも言えない。所々チープでダサいのだが、ウルトラマンのアクションを踏襲していて、特撮的な演出なので意図的だろう。これを良しとするかダサいと思うかはその人次第。

 ただ、本作のようなリアル路線のように見える作風で特撮風の演出をされると、中々受け入れがたいのではないだろうか。

「ベータボックス」を鷲掴みしてポイ捨て、浅見隊員を足元に置いてそのまま禍威獣と戦う

すごい速度で「ベータ・ボックス」をヘリに投げるウルトラマン

  例えばメフィラス星人の装置「ベータボックス」を鷲掴みして、すごい速度で自衛隊ヘリ(チヌーク)に投げ入れたり、敵の禍威獣に捕獲された隊員を救助した後、足元に置いてそのまま戦ったりするなど、メチャクチャな動作が多い。

浅見隊員のセクハラ要素はいらない

 長澤まさみが演じる浅見隊員がお尻を叩くたびにお尻ドアップ。巨大化してセクシャルな角度で録画してWEBにアップされるシーン。メフィラス星人の「ベータボックス」の場所を辿るために、数日間シャワーを浴びていない浅見隊員の体のにおいをじっくり嗅ぐシーン等は見ていて辛いものがあった。

 女性隊員の巨大化は過去作品のオマージュなのかもしれないが、それ以外はくだらないセクハラ要素にしかなっていなかった。巨大化も現代にマッチするようブラッシュアップしてほしい。演出がめちゃくちゃ安っぽいせいでシュールな絵面だった。

【考察】「シン・ウルトラマン」感想⑤「シン・ゴジラ」のテロップの意図は?

 シン・ウルトラマンのタイトルが出る前に「シン・ゴジラ」というタイトルが一瞬だけ出る。これは「ウルトラマン」のOPのオマージュだろう。「ウルトラマン」のOPは、前作「ウルトラQ」を表示してから「ウルトラマン」と表示する。オマージュ以外の意味として同じ世界を共有していることを示唆しているのかも知れない

 例えば本作では竹ノ内豊が演じる政府の男は、「シン・ゴジラ」にも登場する。また冒頭で出てきた禍威獣「ゴメス」は、ゴジラと酷似している。

【考察】「シン・ウルトラマン」感想⑥ウルトラマンの色が変わるのは何故?

 ウルトラマンが最初に現れたときは銀色のみで、トレードカラーの赤色はない。しかし2回目の登場以降は赤色が入った状態で登場する。また、戦闘中時々赤が薄緑になる時があった。何故作中で色が変わるのか。

 まず、銀色一色から銀と赤に変わった理由は、ウルトラマンと神永隊員が融合したためと思われる。融合前は銀色一色、融合後に赤色が付いたためだ。

 次に、戦闘中に色が薄緑になる理由は、恐らくエネルギー切れ等のピンチを演出していると思われる。今作ではカラータイマーがないため、代わりの演出が必要だったのだろう。

【考察】「シン・ウルトラマン」感想⑦「モップツー」とは?

  「シン・ゴジラ」を見た方はすんなりと受け入れられたと思うが、本作における「モップツー」とは「MOPⅡ」という地中貫通型爆弾のことである。本作では地中を進む禍威獣に対し「モップツー」を使用することを決心する田村班長。特に説明もなく「モップツー」という名の後に地中を貫通するミサイルが登場するので、「シン・ゴジラ」を見ていない方は「モップツー」=「地中貫通型爆弾」と認識できないかもしれない。

 地中を進む禍威獣が放射線を出しながら進んでいたシーンで「モップツー」という言葉が出たため、私は軍隊における対CBRNEの警戒基準である「MOPP(モップ)」と認識していた。登場人物もMOPPしていたため(化学防護衣を着た状態)中々紛らしいシーンだった。

MOPPの説明

 友人が「シン・ゴジラ」に出てきたミサイルであることを指摘してくれなければそのまま勘違いしていただろう。

 

最後に

  • ストーリー
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  • 台詞回し
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  • 映像
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  • 演技
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  • テンポ
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評価:

 ウルトラマン好きな人が見たら評価は全く異なるかもしれない。ウルトラマンに思いれがある人が見たら、面白いんだろうなという小ネタはたくさんあったように思う。特に好きでもない私でも「この音楽、演出懐かしいな」と思う場面はいくつもあった。

 ただ純粋な映画としては駄作だと感じた。安っぽいセリフ回しやドラマシーンを改善し、ウルトラマンという素材で現代向きのテーマを見い出せていれば、映画としても面白い仕上がりになったと思うのでとても残念。

 

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