メチャクチャ面白いんだけど…ラストさえ違えば傑作でした。
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- ストーリー
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- 結末
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- 演技
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- テンポ
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評価:
「コリーニ事件」の概要
あらすじ
新米弁護士のカスパー・ライネンは、ある殺人事件の国選弁護人に任命された。30年以上、ドイツで模範的な市民として働いてきた67歳のイタリア人コリーニが、経済界の大物実業家を殺害したのだ。ライネンにとって被告側弁護士として初めて手掛ける大きな事件。だが被害者は少年時代からの恩人だった。事件について一切口を閉ざすコリーニ。ライネンは事件を深く調べていくうちに、想像を超える衝撃の真実に向き合うことになる。
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出演・監督・ジャンル等
- 出 演 :エリアス・ムバレク,アレクサンドラ・マリア・ララ,フランコ・ネロ
- 監 督 :マルコ・クロイツパイントナー
- ジャンル:ミステリー,法廷劇
- 上映時間:123分
- 国 :ドイツ
- 制作年 :2019年
以下「コリーニ事件」のネタバレあり。
「コリーニ事件」感想①法廷物なのにメチャクチャわかりやすいストーリー
法廷物はどうしても動きがなくて退屈であったり、話が複雑で混乱しがちだが、この作品は違う。話の見せ方がとても良く、常に視聴者の興味を引き、ストーリーもわかりやすい。
「何故犯人は沈黙を続けるのか?」「何故被害者ハンスマイヤーは古い拳銃を持っていたのか?」「ドイツ法曹界の闇とは?」謎が深まりつつも少しづつ明らかになるストーリーは視聴者を飽きさせない。
「コリーニ事件」感想②新米弁護士故のカタルシスの無さ
ドイツ法曹界の闇にメスを入れる主人公の立場が外国人の新米弁護士という点は残念だった。
主人公はトルコ人かつ新米弁護士であり、言わばドイツ法曹界の部外者である。そして部外者故に躊躇いもなくドイツ法曹界の闇に切り込んでいく。
つまり「法の正義」を貫くことの難しさ、葛藤が省かれていて、ストーリー中盤で被害者である恩師の正体を知った後も、特にショックを受けることもなく淡々と弁護士としての責務を遂行する。
作中、戦争犯罪を犯したナチスを救済する「ドレーアー法」起草に関わり、それを主人公に追及された検察側のマッティンガーは言う。
「君は遅く生まれた恩恵を被っている。私は職務で関わっただけだ。なのに私を責めるのか?君に何がわかるんだ?この国が当時どうだったのか想像できるのか?法に従うのが我々の仕事であり私の方針だった。」
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これに対し主人公は、「当時反対できなかったのなら今やってください。」とサラリ。もし主人公がドイツ人でベテラン弁護士という立場であれば、より被告人であるコリーニを救う障害が大きくなり、その分「法の正義」を遂行するカタルシスは生まれたのではないだろうか。ドイツ法曹界の部外者でなければ踏み込めない領域だったというのはわかるが、この点は少し残念だった。
「コリーニ事件」感想③スッキリしない結末。何故犯人は自殺したのか。

この物語の決定的な場面は、ドイツ法曹界の伝説的存在であり「ドレーアー法」起草に関わったマッティンガーに、「ドレーアー法」が過ちであったことを認めさせ、歪んだ「法の正義」を正すところだ。マッティンガーの答えはドイツ国家の答えと言っていいだろう。
ついに「法の正義」が成されたが、その直後犯人であるコリーニは自殺してしまう。その結果ハンス・マイヤー殺害事件の審議は判決が出ずに終わってしまう。
コリーニの心情を考えれば自殺した理由は想像できる。やり遂げてつらい人生に幕を引いたのだろう。しかしここで言いたいのはそういうことではなく、「物語としてコリーニが自殺して終わる結末にしたのはなぜか?」ということだ。
合法的に罪に問われなかったハンス・マイヤーを「法の正義」の下に引きずり出し、社会的に罰することができた。しかし殺害という非合法的手段で私的報復したコリーニが法に裁かれることなく物語は終わる。ハンス・マイヤーは法で裁かれるがコリーニは法の裁きを待たず死んでしまう。片手落ちである。非常にモヤモヤしたものが残った。
【考察】「コリーニ事件」感想④ハンス・マイヤーは反省していたのか
戦後はハンス・マイヤーは、己の戦争犯罪を反省していたのだろうか?推測の域は出ないが、私は反省していないと感じた。根拠としては以下の通り。
処刑を明らかに楽しんでいる
イタリア人の住居に立ち入り、住民を捕獲する場面では老婆をいたぶるように脅し、処刑の場では泣き叫ぶ子供を捕まえ、父親の処刑を見させ「強くなる練習だよ」と放言する。
「組織・上官の命令で仕方なく」ではなく、明らかにハンス・マイヤー本人の残虐さが表れており、そのような人物が何の罪にも問われずに自ら反省するだろうか。
ナチス時代の拳銃を大事に保管
ハンス・マイヤーは、ナチス時代に使用していた拳銃を大事に保管している。 過去の過ちを反省した人間がナチス時代のシンボルである拳銃を大事に保管しておくだろうか。
「戦争という極限状態下で残虐な面が生まれた」「拳銃は戒めのために保持していた」と否定する要素はあるため、推測の域は出ないが。
【考察】「コリーニ事件」感想⑤各キャラクターの「二面性」について

「コリーニ事件」のキャラクターたちは二面性(あるいはギャップ)が描かれている。
被害者ハンス・マイヤーは、優しいお爺さんと印象付けた後、冷酷な戦争犯罪者であることがわかる。また、残忍な殺人者コリーニの正体は、悲しき復讐者だ。その他にも、タトゥーだらけで派手なピザ屋の配達員は意外にも勤勉で「経営学とイタリア語の勉強」をしている。
このように「優しい人物が実は冷酷」「残忍な犯人に情状酌量の余地がある」と二面性を意識させる作りになっている。そう考えると映画冒頭の謎のボクシングシーンは「弁護士だけど格闘家」という二面性を表しているのかも?
最後に
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- ストーリー
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- 結末
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- 映像
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- 演技
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- テンポ
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評価:
とにかく見せ方が上手い映画で退屈させない。しかし最後の結末だけは納得いかず、私の中で評価を下げた。法廷劇なのだから犯人コリーニは法律で裁かれるべきだった。コリーニとしては一件落着かもしれないが、「法の正義」としては宙ぶらりんで終わってしまった感じである。
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