謎は作中でほとんど明らかになるので、気楽に楽しめます。
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- ストーリー
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- ホラー
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- 映像
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- 演技
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- テンポ
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評価:
「NOPE」の概要
あらすじ
亡き父から、牧場を受け継いだOJは、父の事故死をいまだに信じられずにいた。飛行機部品落下による衝突死と されているのだが、そんな“最悪の奇跡”が起こり得るのだろうか?何より、OJはこの事故の際に一瞬目にした飛行物体を忘れられずにいた。妹のエメラルドはこの飛行物体を撮影して、“バズり動画”を世に放つことを思いつく。やがて起こる怪奇現象の連続。それらは真の“最悪の奇跡”の到来の序章に過ぎなかった…。
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出演・監督・ジャンル等
- 出 演 :ダニエル・カルーヤ, キキ・パーマー, スティーヴン・ユァン
- 監 督 :ジョーダン・ピール
- ジャンル:SF, サスペンス, ホラー
- 上映時間:130分
- 国 :アメリカ
- 公開年 :2022年
以下「NOPE」のネタバレあり。
「NOPE」考察①宇宙人は上位存在という固定観念を逆手に取ったユニークな正体

基本的にUFOに乗ってくる宇宙人は、人間よりも優れた知能や技術を持つ生物として描かれることが多い。何故なら宇宙人が地球で現れた時点で、人類よりも優れた科学力を持っているからだ。
勿論、単に原始的な宇宙生物が暴れるという映画は多数あるが、本作の宇宙人は我々が想像する宇宙船のようなデザインをしていたり、あたかも馬を拉致(アブダクション)している行為から、知的生命体が乗っている宇宙船であると誤認させる。しかし、その正体はUFOの形をした原始的な生き物であり、意外性があって面白い。
この宇宙人の正体は、木馬を吸い込む場面が伏線となっていると思う。「宇宙船を創造できる科学力を持ちながら、馬と木馬の区別もつかないのか?あるいは木馬と分かってうえで吸い込んだのか?」と観客に少し疑問に持たせることで、後々正体が明らかになったところで「知能の低い原始的な宇宙人が手あたり次第食べていたんだな」ということが受け入れやすくなっている。
「NOPE」考察②猿の暴走事件は何の意味があったのか?

本編とは直接関係のない、猿のゴーディの暴走事件。これは、この映画において何を意味するのか。
- 猿≒宇宙人
- 人間の傲慢さ
- ジュープの間違った成功体験
①猿≒宇宙人
全編を通して、人間以外の他種は「人間には理解できない・制御できない」として描かれている。また、目が合えば暴れ出すのは馬、猿、宇宙人の共通項だ。
これらのことから、猿の暴走事件は、宇宙人との関係性と重ねていると思われる。どちらも人間には理解できない・制御できない性質を持っている。
②人間の傲慢さ
猿が暴走した収録では、猿を粗末に扱っている描写がいくつかある。
- 寝ているゴーディを収録直前に無理矢理起こす
- 時計が読めないことを知っていて時計をプレゼントする
「猿に時計のジョークは理解できない」と思うかもしれないが、馬鹿にしたような空気は理解できるだろう。(例えば犬は声のトーンや表情で馬鹿にされたことを認識して怒ることがある。)
猿が暴走するきっかけは、不運にも風船が割れたことで興奮したことと思われるが、それは”ラストストロー”でしかないのかもしれない。
③ジュープの間違った成功体験
また、猿の暴走事件は、ジュープに間違った成功体験を与えている。暴走した猿が彼だけは襲わなかった。このことから宇宙人ともコミュニケーションが取れると思ったのだろう。
ジュープが宇宙人とゴーディを重ねていたことは、宇宙人との接触を試みたショーを行う前に事件の回想が入ることや、猿の事件の共演者をショーに呼ぶことから推測できる。
また、彼が生存できたのは「奇跡」あるいは「宇宙人による介入」だと考えている節がある。猿の暴走が”6分13秒”に及ぶ大惨事、宇宙人が現れる時刻が”6時13分”、猿の番組は毎週”金曜日”、宇宙人が来るのは”金曜日”と、彼にとって猿の事件と宇宙人との接触に何らかの関連性を見出していたのは間違いない。
④何故猿はジュープを襲わなかったのか

何故猿はジュープを襲わなかったのか。恐らくたまたま目が合わなかったからだろう。
一見目が合っているような描写だが、最初は立っていた靴を見つめていたため目が合わず、猿が近づいてからは両者の間には机のマットがあった。マットが間にあることで直接目を見なかったことで、ゴーディが落ち着いたのではないだろうか。
⑤何故ジュープは食われ、OJは助かったのか
ジュープは猿の事件を通して、間違った成功体験を得てしまった。「自分なら宇宙人を飼いならせる」と。一方でOJは違う。彼の馬に対しての態度を見ると、飼いならそうとするのではなく、馬に敬意を払って接していることが分かる。
そんなOJだからこそ、目を合わせなければ食われないということに気づけたのだろう。
「NOPE」考察③言うことを聞かないのは人間も同じ
馬、猿、宇宙人と人間には理解できない、制御できない存在として描かれているが、人間も例外ではない。妹のエメラルドは遅刻の常習犯で商談中でもお構いなしに好きなことを喋るし、エンジェルは勝手に映像を覗き見るし、ホルストは暴走してやっとの思いで撮影したフィルムを台無しにする。
「動物や宇宙人だから理解できない、制御できない」という枠組みを超えて、あなたが理解していると思っている隣人や家族すらもその対象であると言っているようで、少し怖くなる。
「NOPE」考察④ホルストが最後に撮りたかったものとは?

やっとの思いでGジャンの撮影に成功したと思ったら、ホルストが追加の撮影をしようとして捕食されてしまう。彼が撮りたかったものとは一体何なのか。
彼が撮りたかったものは当然、宇宙人による捕食シーン、それも被捕食者の視点からの映像だろう。例え自分が死んでしまっても撮りたいと考えたに違いない。
では、何故彼は捕食シーンを撮りたかったのか?「彼が撮影狂いだったから」で説明は付くが、もう一つ理由があるかもしれない。
それは彼に「被捕食願望」があったのではないか、という疑惑だ。
それを示唆するものは以下の通りである。
- 捕食動画を見ながら「いいか 馬ガール こっちじゃとびきり上等のレモンタルトが焼き上がる」と発言
- 「馬ガール 君は夢を追っている いつか山の頂上に立ち世界に注目される夢… 叶わない夢だ」と言いながら、自身も残念そうな顔をする
- 最後は山に登り、撮影する。食われる直前に、興奮するように息を荒げる
①のシーンを普通に受け取るならば、「仕事で動画を編集していて、忙しいんだ」という言い分に聞こえる。しかし、彼が動画編集作業をしているようには見えなかったし、あくまで映像を見ているだけのように見える。これを「被捕食願望」というフィルターを通すと、「今良い所なんだから邪魔するな」と聞こえる。
また、②はエメラルドからの仕事を断った際の発言だが、それにしては余りに含みがある言い方をする。まるで自身に言い聞かせるような…つまり「捕食されたいけど叶わない夢だ」と自分で自分を諦めさせているような発言に聞こえる。
そして③のシーンでは、捕食される夢を叶えるために山を登る。②の発言の場面と重ねている。さらに撮影中激しく声を荒げており、まるで性的興奮をしているかのような場面とも取れる。
「NOPE」考察⑤最悪の奇跡
この物語は”最悪な奇跡”が何度も起きる。
- 宇宙人が吐き捨てたゴミに当たって死ぬ
- 監視カメラにたまたまカマキリが被さって撮影できない
- 誕生日プレゼントの風船がたまたま割れてゴーディが暴走する切っ掛けとなる
- 脱げた靴が直立する(ジュープが「奇跡」と勘違いする原因となる)
- 毎週金曜日、6時13分に宇宙人と接触してしまう(ジュープが「奇跡」と勘違いする原因となる)
- 宇宙人を撮影中に全面ミラーヘルメットの電動バイカーが現れる

全面ミラーヘルメットの男が電動バイクに乗って颯爽と現れたときは思わず笑ってしまった。余りにも物語にご都合が良すぎるからだ。しかし物語を通して”最悪な奇跡”が度々出現しているため、許せる範囲に収まっている。
最後に
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- ホラー
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評価:
ややこしい映画なのかと身構えていたが、かなりエンタメよりの作品だった。ホラーやSFとして期待していた人は低評価になるかも。
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